コンクリートメンテナンス協会(徳納剛会長)は7月19~20の2日間、都内で「コンクリート構造物の補修・補強に関するフォーラム2017」を開催した。「構造物の健康寿命を伸ばすためのシナリオ」をテーマに、19日に5件、20日に9件の講演を行った。2日間累計で950人が参加した。
19日は十河茂幸近未来コンクリート研究会代表が「予防保全で健康寿命を延ばす策」、宮川豊章京都大学特任教授が「コンクリート構造物を造りこなし使いこなす」と題してそれぞれ講演した。
十河代表は、コンクリート構造物を人間になぞらえて、解体するまでを個体寿命、安全な状態で共用できる期間を健康寿命として、予防保全による維持管理で経済的に健康寿命を延ばす方策について説明。予防保全には、損傷が外観に現れる前の見極めが重要で、定期的な健康診断(点検・診断)が必要だが、専門家であるコンクリート診断士の数はまだまだ少ないとした。
また、学生がコンクリート診断士のアドバイスを受けて小規模橋梁の点検・診断を行った事例を紹介した。「素人(学生)の点検でも専門家の指導を受ければ、分析に使えるものになる」と指摘。コストをかけずに点検し、専門家による正確な診断を行っていくことが必要と話した。
宮川特任教授は土木構造物・コンクリート構造物は本来「丈夫で、美しく、長持ち」するものであるとして長寿命構造物の例を紹介するとともに、成功の基となるさまざまな失敗例とそこから得られる教訓、最新の研究動向などを紹介した。
新設構造物は「造りこなす」こと、既設構造物は「使いこなすこと」が必要だとして、新設の場合には適切に造られたか検査すること、既設の場合には構造物が現在どのような状態にあるかを診断することの重要性を強調した。
塩害・アルカリシリカ反応・PCクラウト充てん問題などの耐久性に関するリスクについても言及し、宮川特任教授が所属する京都大学インフラシステムマネジメント研究拠点ユニットでの研究状況などを説明。構造物には経時的な変化を想定したシナリオによる戦略的な維持管理が必要だとして、「構造物の目的に則ったシナリオを作り、それに見合った技術を使うことが重要だ」と述べた。
このほかセメント協会セメント系補修・補強材料推進ワーキンググループの島崎泰氏が「すぐに役立つセメント系補修・補強材料の基礎知識2017」と題して講演した。